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■090 線香花火 2002/09/02

大学を出て、もう3年以上経つのか。
大学を出てからというもの、夏というものには大した思い入れも、思い出もなかった。

大学を中退した俺にとって、最初の夏はただ余りある時間だった。
親の脛をかじりながら、ちんたらと2ヶ月もかかって車の免許を取った。
去年の夏はローソンでバイトしてた。地元のローソンは毎年夏にはシャレにならないほど忙しい。その夏も2週間休み無く働かされた俺は本当にバイト5人でまわすのは勘弁してほしいと思ってた。

そのバイト漬けだった夏。店内で割とよく耳にする歌があった。仕事しながらなんで歌詞もタイトルも、歌っている人もわからないその歌だったけど、なぜかサビだけはずっと覚えてた。
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嗚呼 線香花火よ
当たり前の事しかない現実に
ふと僕の意識が飛ぶ程に
全てを照らし続けてくれないか
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メロディはものすごくハード。声もシャウトって感じ。なのにすごく切ない。
俺の好きなジャンルの音だった。

そしてその夏も過ぎ、その歌のことは頭の中から消えていった。
テレビとかでは聞かないところを見ると流行歌ってものじゃあないんだろう。
こういうジャンルの音はなかなかヒットしない。良し悪しじゃなく市場にそっぽ向かれてるから。

だから俺は、いっつも気に入った歌を探すのは必死だ。
だってなかなか置いてないから。
CDショップを何件も回らなきゃ手に入らないものがほとんどだ。


で、そんなこんなで今年も夏がきた。今年の夏も、俺は「この世から蚊がいなくなればだいぶ暮らしやすくもなるんだけどな」なんてどうでもいいことを考えながら日々を送っていた。
東京に来て社会人として働いてるけど、ずーっと働いてるって事も含めてあんまり変わってないなって思う。ま、俺が俺である以上、環境が変わったくらいじゃ変わることもそうそうあるまい。

今年の夏も、大した思い入れも、思い出もなくだらだらと過ぎていくのだろう。そう思っていた。別にそれでも構わない。割合厭世的な人生観を持っているのか、基本的にはどうでもいいと思っていた。

そんなどうでもいい俺の人生の、どうでもいい夏に
あの歌がまた聞こえてきた。
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嗚呼 線香花火よ
当たり前の事しかない現実に
ふと僕の意識が飛ぶ程に
全てを照らし続けてくれないか
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何かを思い出したように何かがしたくなった。
とりあえず無理やりに連休を取ってみた。
実家に帰って、会いたい人に会ってみた。
5月に死んでしまった飼い犬の、犬小屋を見た。
メールを出してみた。

当たり前のことでしかない訳だけど、
俺の行動には当たり前の結果が返ってきた。
それが妙にうれしかった。

三日休んだ仕事は、ちぐはぐになって勘を取り戻すのに時間がかかったり
懐かしい友や、初めて会う人と楽しいときを過ごしたり
犬小屋はまだそこにあって、けどその場所の主はそこにいなくて。そこに哀しさをいっぱいに感じたり
メールには返事が返ってきた。それが心に染みるように嬉しかったり

当たり前の日々は、常にそこにある。
それは当たり前なのだろうけど、心積もりだけで
立派な思い出に思えた。

あの歌はなんというのだろう。誰の歌なんだろう。
今度の休みはあの歌を探しに行こう。
それも思い出になるに違いない。

そして来年もあの歌を聞こう。

線香花火/ガガガSP」より抜粋



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